2024年問題について

今回の記事は、昨今、話題となっております「2024年問題」について、業界関係者及び他業種の方々に広く知っていただきたく、コラムという形式で投稿いたします。

「2024年問題」とは

「2024問題」とは、現在、労働基準法の時間外労働時間の規定の適用が除外されている「運送業」に対して、2024年4月以降は「独自の時間外労働時間に関する規定」が適用されるというものです。
具体的には、トラック・トレーラー等に乗務するドライバーの年間の時間外労働時間の上限が960時間に制限されるという内容になっております。

運送業と一部の業種を除く一般的な業種に関しては、36協定を締結している事業所においては1ヶ月あたり45時間以下、1年あたり360時間以下(3ヶ月以上の期間を対象とする1年単位の変形労働時間制を導入している場合は1ヶ月あたり42時間以下、1年あたり320時間以下)が限度時間となっております。
また、特別条項付き36協定を締結している場合においては1ヶ月100時間未満(休日労働時間を含む)、1年あたり720時間以下となっております。

これら一般的な業種と運送業を比較すると、運送業に関しては1ヶ月あたりの制限が設けられておらず、1年間という長いスパンで960時間という制限が設けられているため、繁忙期とそうでない時期との時間外労働時間の落差を年間を通して調整できるという内容になっております。
このように、一般的な業種に比べて緩和された規定となってはいますが、この年間960時間という制限を守ることが困難な事業者が多く存在しているというのが現状です。

実際の運用に関して

実際に時間外労働時間の累計を1年間960時間以内に納めるとすれば、単純に計算すると1ヶ月あたりの時間外労働時間を80時間以内に納めなければなりません。
仮に、1年を平均した1ヶ月あたりの労働日数が20日であれば、1日あたりの時間外労働時間は4時間までとなります。
1日あたりの法定労働時間は8時間なので、以上の4時間を足しますと、1日あたり労働させることのできる時間の上限は12時間ということになります。

ちなみに、近距離輸送に関しては1日あたりの走行時間は長くても6時間程度、荷積み荷卸しにかかる時間は2時間程度ですので、走行時間と積み卸しの時間を合わせても8時間程度に納まります。
中距離輸送に関しては、2日で1往復が基本になりますので、1日あたりの走行時間は長くても6時間程度、荷積み荷卸しにかかる時間は2時間程度で、近距離輸送の場合と同様に1日の労働時間は8時間程度となります。
そして、長距離輸送に関しては、中距離輸送と同様に2日で1往復が基本になりますが、1日あたりの走行時間は長ければ10時間を超えてしまうこともあり、それに積み卸しの2時間を加算すると1日の労働時間が12時間を超えてしまいます。
そのため、長距離輸送の連続運行を避け、間に近距離輸送や中距離輸送を挟むことで、1ヶ月の労働時間の平均値が12時間を超えないように調整することとなります。

しかし、問題は荷積み荷卸しにかかる「待機時間」にあります。
以上のように、近距離・中距離・長距離輸送を絡めて1日あたりの労働時間を10時間程度に調整したとしても、1日あたりの「待機時間」の平均時間が2時間を超えてしまえば、最終的に1年間960時間という制限時間を超えてしまいます。
走行時間や積み卸しにかかる時間は事業者側で調整できますが、「待機時間」に関しては事業者側では調整が困難となっており、最悪のケースでは1日の「待機時間」が12時間を超えるケースすら起こり得る、というのが現状です。
この場合、「待機時間」だけで1日あたりの想定労働時間を超えてしまっていますし、更に、そこから走行時間や積み卸し時間を合計すると、1日の労働時間が24時間に達してしまうということも珍しくはありません。
このように、1年間の時間外労働時間960時間以内という規定を守る上で、障害となっているのが「待機時間」の存在となっております。

我々が講ずべき対策

そのような環境下において我々運送事業者に求められる課題は、荷積み荷卸しにかかる待機時間をコントロールし、1日あたりの労働時間を12時間以内に調整することです。
そのためには、当該輸送業務にかかる関係各社様と事前に連絡・調整を行い、待機時間を含めた1日あたりの労働時間が適切なものとなるよう運行計画を定めておく必要があります。

しかし、現実は、関係各社様との待機時間に関する調整を行うことは難しく、完全に運行計画通りの労働時間を守れる訳ではありません。
その背景には、我々運送事業者・関係各社様における人的資源の不足等、施設・設備の故障等、運行経路における事故渋滞や通行止め等、様々な要因が関係しております。

このように、1年間960時間という時間外労働にかかる制限の規定の適用に際して、様々な問題・課題が残っているため、世間一般では「2024年問題」として取り上げられているのでしょう。
それに加え、昨今の燃料価格の高騰、労働時間短縮に伴うドライバーに支給する給与の時間単価の増額などもあり、我々運送事業者の一部の事業者においては、事業を拡大すればするほど赤字が膨らんでしまい「負のスパイラル」に陥ってしまう、という話も耳にします。
とは言え、我々運送事業者は、従業員とその家族の生活の確保、物資の安全輸送による地域社会の安全と生活資源の安定した供給など、我々運送事業者が果たさなければならない確固たる目的がある以上、「2024年問題」にかかる課題を一つずつクリアし、最終的には安定した雇用環境と事業の経営を達成しなければなりません。

我々三宅運送社員一同は、運送事業者の果たすべき目的の達成に努めてまいります。

これからも、未熟者ではありますが、運送業界に関する情報を社会全体と共有することを目的に記事を投稿させていただきたいと思っております。

最後まで当該記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。

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